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親から電話があった。
とても寂しそうな声。涙ぐんでいるのがわかる。
一人で家に居て、ご飯作っても食べてくれる人はいなくて、声を出しても聴いてくれる人はいなくて、お洒落をしても見てくれる人は居なくて、一緒に出掛ける人も居ない。
そりゃあ寂しいだろう。
じゃあ、なんでそんな寂しい状況になった?
誰のせい?
そりゃあ、あんた、自分のせいでしょ。
「誰も助けてくれない」と嘆きますか?
だけど、困った時に助けてくれる人を作る事ができなかったのは、自分のせいでしょ。
母親は、
「お母さんがもし自殺したらどう思う?私は、あなたに申し訳なくて、あなただけ置いて行くのが不憫で、死ねない」
という。
はっきり言って、死んでくれて構わない。
そりゃあ悲しい。絶対に悲しい。だけど、「生きてくれれば良かったのに」とは思わないだろう。
ここまで育ててくれたのは本当に感謝している。
しかし、俺は、母親のために犠牲になるつもりはないし、俺には俺の人生がある。やりたいことがある。そして、俺の理想の人生に、母親は居ない。ここまで突き放すのは、俺を苦しめたから。
ただ、「自殺していいか?」という問いに対して、「いいよ。」とは言えない。そこまで非道にはなりきれない。
かといって、「死なないで」とも言えない。
だから、「それはお母さんの自由です」と言った。
母親の、あれほど寂しくて悲しくて可哀相な人生は、見ていたくない。
それなのに手を差し伸べない俺は、悪い人間なのかな?